テクノロジーと歩む、創造的な未来をイメージする

青山 満 GMOクラウド 代表取締役社長

 

 福井には18歳まで住んでいた。大学時代から東京に暮らしているが、おいしい食や水、豊かな自然に恵まれた愛すべき故郷。たびたび帰省もしているが、いまでも時間があれば海とそこに沈む夕陽を見たくなって、ふらりと三國まで行く。昔は単線の電車に乗って訪れていたその町は、今も昔も変わらない灰色の町だ。近ごろはせいこガニを楽しみに帰省するせいか、冬に差し掛かる日本海の印象と相まって、風情ある町の情景が灰色のイメージとして心に残るのだ。さらにそのイメージを助長するのは、人が減ったなぁ、という現実感だろうか。人口減少・高齢社会の本格到来や労働力不足、多くの地方自治体が抱えている問題は、もまた例外ではない。

 東京ではIT事業の会社を経営している。1996年に現事業を立ち上げ、インターネットの成長と加速とともに歩んできた。最近では事業領域をIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)に広げている。世界はいま、第4次産業革命とも呼ばれ、人工知能やロボットといった機械が産業を大きく変革していく時代に入っているのだ。

 福井でも数年前より「福井県IoT推進ラボ」を立ち上げ、地域企業へのIoTの導入やウェアラブル(着用できる機器)についての研究を支援していると聞いた。

  (中略)

 こうした好事例からも、あらゆる産業で急速な対応が叫ばれているIoTだが、一方で同推進ラボがとったアンケート結果では、二の足を踏んでいる現場の空気感が見てとれた。導入に関する障壁として「関心はあるが、活用する方法がわからない」、「メリット、費用対効果がわからない」という意見が半数以上を占めている。何をやったらいいかがわからない、そのうえお金がかかるのではないか、心配が先に立つ。なぜこうなるのか。

 一つは、IoT分野にはわかりやすく形になっているものが少ないこと。もう一つは、これからの福井の未来がイメージできないことに原因があるのではないか。当社でサービス化しているAIを使った「hakaru.ai(ハカルエーアイ)by GMO」というものがある。その名の通り「測る・AI」として、製造工場やビルの管理などで使われている、アナログメーターやデジタルメーター、回転式メーターの点検業務を、AIの技術を使って自動化するというものだ。(中略) AIが補うのは、人間の作業負荷の一部だけだ。なにもテクノロジーを難しく考える必要はない。まずは、日常の仕事のなかにある課題を拾い上げることから始めてみてはいかがだろう。

 ITの推進には、必ずしも専門家が県内にいる必要があるわけでもないが、最近は働き方改革でリモートワークなども実施されている。ぜひ県が率先してIT人材を呼び込む施策も進めてほしい。他県にはない思い切ったことを実現すれば必ず人材は集まってくる。

あおやま・みつる 1967年福井県福井市生まれ。大学卒業後、米国にてスノーボードメーカーを設立。自社ホームページを運営するなか、インターネットホスティングの将来性に魅力を感じホスティング事業を開始。1997年より株式会社アイル(現GMO クラウド株式会社)の代表取締役社長に就任し、インターネットを取り巻くセキュリティやソリューション事業を次々と展開。2011年よりクラウドサービスに本格参入。2014年東証一部上場。近年は、自社の強みを活かしAI・IoT 事業へと挑戦の幅を広げている。

※この欄は「福井の幸福を語ろう ふるさとへの提言」(中央経済社刊)から一部抜粋したものです。全文を読みたい方は同書をお買い求めくだい。