福井人が結びついていく仕組みの構築を

淺地紀幸 NetReal 代表取締役社長

 新しいことを始めるには若者の力が大事だと思います。そのためには、若者に発言権を持たせてあげるようにしないといけないと思います。ましてや、控えめな県民性の福井の若者は、思っていたとしてもなかなか声は上げないでしょう。この若者の声を拾い上げ、発言力・実現力へと持っていくことを提言したいと思います。本書では、県外在住福井出身者の方々が外から福井を見て、県内在住では気づかないであろう観点からの提言をされていると思います。しかしながら、控えめな県民性ゆえ大きな声になっていないだけで、県民の中にも問題意識・危機意識を持たれている方は多くいらっしゃるのではないかと推察します。

 私はこのような意識ある方々が結びついていく仕組みの構築の仕方を、実例をもとに提言したいと思います。結びつき、仲間となり、多くの賛同者が集う団体になれば、発信力・実現力は増します。控えめな県民が、意思を発し、団体として動いていけるようになるには時間はかかると思いますが、一度その仕組みを構築できれば、あとはすごい実現力で動き始めると思います。

 私自身は、東京にて7名で始めた「イエロー会」(福井出身・所縁のある若手の会)を10年かけて600名以上にし、衰退を始めていた東京福井県人会に合流させ、公私ともに助け合う情報網や、2か月に一度顔を合わせて情報交換をする仕組みを構築してきました。県人会の目的である互助の精神で公私ともに助け合っていくことも果たされてきていると思っています。

 以下、そのイエロー会での10年の経験をもとに、意識ある方々に実例として提示します。こういった会を運営するにあたっては、楽しい集まりであることを第一に考えなければなりません。とはいえ、楽しいことは人それぞれです。自身のビジネスに結びつく活動が楽しいと感じる人もいれば、ゴルフ仲間が出来る集まりに参加することが楽しいと感じる人もいます。より多くのさまざまな楽しみを模索していくことが大切です。イエロー会では、バーベキュー大会、ゴルフ会、グルメ会、講師を呼んでの勉強会、スキー合宿など、毎回楽しい会を開催し、自分自身も楽しみを増やしていきました。また、会の最終目的(10年先、20年先の目的)は明文化し、皆で楽しみながら目的に向かっていければ嬉しいということを共有することも大切です。

(中略)

 精神的負担のない形としては、名刺交換は何度でもOKということをルールとして明文化しました。以前名刺交換した相手の名前が思い出せないといった経験は誰にでもあるかと思いますが、ルールとして明文化しておけば、堂々と「名刺交換は何度でも大丈夫ですよね」と言いながら何度でもすることができます。これは、会を重ねて参加者も増えてくるようになると大変有効です。

 それから、参加できるときだけすれば良いという任意参加を基本としました。そのためにも団体母数は多いほうが良く、会合には団体母数の2〜3割の方が都合のつく時に参加してもらうという組立てで進めてきました。さらに、何とか都合をつけてでも参加したいと思うような魅力的な会合を年に1度くらいは企画しました。特に勉強会は、講師を実業界の方、文化界の方、政界の方という風に毎回変えていけば、多くの方をとらえる魅力的な企画になると思います。連絡方法も時代とともに変わっていきます。若い人が面倒臭いと思わない連絡方法―フェイスブック、ライン、インスタグラムなど、を常に模索するようにしていました。新しいことをしていくのは常に若者です。

 30代を中心に、20代がフォロワー、40代がアドバイザー、50代以上がオブザーバーという形が望ましいのではないかと思います。5年、10年経ってもこの構成が変わらないように、常に20代が世話役に入ってもらえるような魅力、楽しさを、本筋とは違うと思っても増やし続け(バーベキュー、ゴルフ、ボーリング、グルメ会など)、継続し、仲間を増やし続けるよう皆で努力していこう!と世話役一同が常に呼びかけていくことが大切です。

 私は、意思ある方が皆と混ざって楽しく同じ釜の飯を食べるだけで、化学反応が起こっていくものだと思っています。多くの人が集まるようになると情報発信力がついてきますし、福井県外に散らばっていった県民との情報流通、交流の機会も創出できます。数年かかるとは思いますが、明文化されたことを将来の目的とした楽しい会に集まっていると、自然と目標が共有されていきます。情報発信力と、さまざまな業界にいる方々との目標を共有したネットワークによる実現力が、福井を、そして日本を変えていくのだと思います。(以下略)

 

   あさぢ・のりゆき 1967 年12月生まれ、福井県坂井郡金津町古町で育ち、藤島高校、早稲田大学商学部卒業後、ベンチャー企業勤務を経て、29歳の時に親の会社(細幅織物デザイン製造)の新規事業部門(インターネット事業部)立上げの形で独立。初年度より黒字で進んでいたため、30代で東京福井県人会理事・青年部部長、イエロー会ファウンダーと社外での社会貢献活動を開始、東京青年会議所にも所属。40代で東京若越クラブ幹事、ダイヤモンド経営者クラブ、JBC、東京日本橋ロータリークラブ等入会。50代に入る前に青年部部長やイエロー会筆頭世話役を若手に移譲し、その他団体は東京若越クラブ、ロータリー以外ほぼ卒業。現在は、ロータリーの精神である本業による社会貢献に重きを置き始めている。本業は、中小企業の売上げアップ支援を行うクラウドビジネスで、現在会員数28,000 社超、毎年2,000社以上のペースで増加中。

※この欄は「福井の幸福を語ろう ふるさとへの提言」(中央経済社刊)から一部抜粋したものです。全文を読みたい方は同書をお買い求めくだい。